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2008年10月27日
R0ckfery
A子ちゃんに出会った。
もうすっかり陽が落ちた夕刻。
自転車に乗った彼女を捉えたのは、互いがすれ違う10メートル手前くらいのことだった。
片足で自転車を支えた彼女は左手でブレーキを握り、右手で軽く真ん中から分けられた髪をかき上げた。
『また月曜日だね』
そう、彼女に会うのは不思議と月曜日が多い。
見上げた空、街灯が眩しすぎて星は見えない。
A子ちゃんは時折バランスをとるように右手もブレーキに手をかけた。
爪先がつく程度の自転車のサドルは、立ち話をするには彼女には高すぎるようだ。
そして、今度は左手で右前髪をかき上げた。
かき上げた後、小首を右に傾げ、目線だけを地面に相づちを打った。
『痩せたんじゃないか?』
僕は、本当は“きれいだね”って言おうとしたんだ。
だけど口から出たのは、さして深みも無い恣意的な言葉だった。
「そう?」
彼女は右手を鼻の下に持っていきながら軽く笑ってみせた。
もとより細身の彼女の身につけていた細身のパンツが、自転車を駆る姿にはいっそう似合ってた。
僕は何とか、彼女を美しいと思う気持ちを伝えたかった。
それが素直な気持ちだったはずなのに、やっぱり僕は言えなかった。
あとは、その場から早く立ち去りたい焦燥感、それが苦笑いとなるだけ。
お決まりの挨拶の後、僕は彼女の後ろ姿を見送りたい衝動に駆られた。
もしかしたら、もう一度振り返り様に、僕に手を振ってくれるか、僕の後ろ姿を確認する彼女と目が合ったかも知れない...。
でも僕は振り返らなかった。
何事も無かったように。
僕は歩き出した歩幅を変えなかった。
A子ちゃんとは、ただ道ばたですれ違っただけの顔見知りだったかのような振りを決め込んで。
投稿者 Wataru : 2008年10月27日 23:15